国土交通省 中部地方整備局 名古屋港湾空港技術調査事務所

事業内容

技術開発・設計

港湾構造物は、その多くが海上、海中に設置されるため、波浪や潮流などの自然環境を配慮した上で設計をする必要があります。また、近年では施設の高規格化・大規模化にともない、大水深・軟弱地盤といった厳しい条件や、耐震性の確保、環境への配慮など様々な課題への取り組みが必要になっています。

設計段階では、それぞれの構造物に求められる機能性、安全性等を確保するため、構造物毎に必要な条件を考慮する必要があります。次に主な港湾構造物を紹介いたします。

1.耐震岸壁の性能設計手法の検討

 防波堤は台風等の波浪から港湾を防護し、港湾の静穏度を確保するとともに背後地の生命・財産を守っています。また、悪天候時に船舶の避難場所として港湾を利用するためにも役立っています。
 防波堤は有義波(※)等の波浪条件を考慮して設計を行いますが、必要に応じて模型実験を実施し、設計断面の耐波性能等の検証を行います。

2.岸壁の機能

コンテナ貨物の増大にともなう船舶の大型化に対応するため、大水深岸壁が整備されています。名古屋港では世界最大級のコンテナ船(全長約300m、最大喫水14m)が安全に寄港できるよう水深16mのコンテナターミナルを整備しています。

 また、大規模地震発生後も速やかに港湾荷役、緊急物資の輸送ができるよう耐震性を確保するとともに、建設コスト縮減にも配慮した設計を行います。

3.臨港道路の機能

 経済活動のグローバル化にともない、港湾貨物量は増大しています。このため、港湾と背後地を円滑に結ぶための臨港道路の整備が必要になります。

 四日市港では霞ヶ浦北埠頭と伊勢湾岸自動車道の川越ICを結ぶ霞4号幹線臨港道路を整備することとしており、早期供用、建設コスト縮減に加えて環境、景観に配慮した設計をしています。

※有義波

有義波高は目視観測による平均的な波高といわれ、一定時間に観測した波を高い順に整理して、高いほうから3分の1の波の高さまでの平均したものです。


船舶

大型浚渫兼油回収船「清龍丸」、清掃兼油回収船「白龍」等管内の船舶の維持・修理や効率化を図るための技術開発を行っています。

名古屋港『清龍丸』

清流丸

「清龍丸」は平成16年度に整備された浚渫兼油回収船で通常は航路等船舶が輻輳する海域の浚渫を行い、大量の油流出事故発生時には油回収を行う船です。
 船にはヘリコプターデッキや情報収集システムを装備し、災害発生時にも対応できます。
 船の建造に際しては浚渫機能においては、施工精度向上を図るため船舶中央部に幅の広いドラグヘッドを装備し、リサイクルポンプによる積載土量の増加を図り効率化を図っています。
また、油回収作業では荒天時においても効率的に油回収作業ができるよう水ジェット集油装置を装備しています。

名古屋港『白龍』

「白龍」は平成20年度に整備された海洋環境船で、通常は伊勢湾・三河湾の海面 に浮遊するゴミの回収を行い、大量の油流出事故発生時には油回収を行う船です。 また、環境モニタリング機能を装備し湾内のデータ収集を図っています。

監督測量船


調査

気象海象観測

管内の各事務所において波浪観測、潮位観測、風向・風速観測、地震観測を行っています。これらの観測成果は、港湾・海岸の計画・調査や防災対策など幅広く活用されています。

全国沿岸の波浪情報は常時収集されており、その情報は沿岸域の開発・利用・防災に幅広く活用されています。しかし、今までの波浪計は海底に設置する機器が主流であり、設置水深は設置・保守の点から50m程度が限界でした。このため、今までの波浪計で観測された波は屈折や海底地形による浅水変形の影響を受け、また高波浪時には砕波等の影響によって欠測になることもありました。

それに対し「GPS波浪計」は、GPSを搭載したブイを沿岸から沖合約20kmの大水深の海上に設置し波の高低差を測定します。これにより海底地形の影響下にない波浪情報の収集が可能となり、波浪情報の高度化・精緻化に貢献します。

また、潮位変動も計測できることから津波の観測が可能であり、沖合設置の利点により、地震発生後の津波の動きをいち早く捉えることができます。そしてその情報を自治体や国民の皆さんに対して早期に提供することで、より高い安全性の確保に役立ちます。
 東海・東南海・南海地震による津波被災が懸念されている当地域では、熊野灘及び駿河湾口部への「GPS波浪計」の配備を検討しています。

それに対し「GPS波浪計」は、GPSを搭載したブイを沿岸から沖合約20kmの大水深の海上に設置し波の高低差を測定します。これにより海底地形の影響下にない波浪情報の収集が可能となり、波浪情報の高度化・精緻化に貢献します。

海洋短波レーダーによる観測システム

伊勢湾、三河湾内の流況、波浪を面的に観測するため海洋短波レーダによる観測システムの整備を進めています。これにより、海域の浮遊ゴミの効率的な回収や海域の環境の把握に活用することができます。

LCM(ライフサイクルマネージメント)

1960年代以降の港湾整備の発展に伴い、港湾ストックが年々増加し、順次老朽化してきています。厳しい財政事業の中で、既存港湾ストックのメンテナンスを適時適切に行うためには、施設の劣化状況の把握、劣化予測結果等をもとに計画的な維持修繕計画の立案や、予防保全が重要です。
このため、桟橋構造物を対象とした劣化診断方法、劣化予測方法等について検討します。


防災

1.管内設計入力地震動に関する検討

中部管内では東海、東南海地震等の発生が危惧されており、大規模災害発生時にも緊急物資等を安全かつ効率的に荷役できる耐震強化岸壁の整備が求められています。
 耐震性の検討では、地震動、地盤及び構造物の周波数特性等が必要となります。その中の地震動の算出では震源特性、伝播経路特性、対象地点周辺の地盤特性(サイト特性)について考慮した時刻歴波形について検討しています。

2.直立浮上式防波堤(津波対応型防波堤)に関する技術検討

津波や高潮から港湾背後地域の被害を低減するためには、港口部に防波堤を設置することが最も効果的ですが、船舶が航行する航路には防波堤を設置することはできません。
 異常時には海底に埋設された鋼管に空気を送り込み、浮力を利用して数分で防波堤の機能を発揮する「直立浮上式防波堤」の実用に向けた検討を共同で行っています。本技術が実用化されれば港口部にも防波堤を設置することが可能となり、臨海部の防護機能を向上させることができます。

3.津波による漂流物の港湾構造物への影響検討

東海、東南海地震等大規模地震発生後に来襲する津波によりコンテナ貨物が漂流し、港湾施設等に影響を与えることが危惧されています。このため、津波来襲時のコンテナの漂流による影響について水理模型実験等により検討を行っています。


環境

1.浚渫土砂の有効活用

航路、泊地の整備に伴って発生する大量のシルト系浚渫土砂の有効活用を図るため、中性固化材等を使用することにより、浚渫土砂を改良し、覆砂材や建設材料として利活用する技術検討を進めています。

■覆砂・干潟材料への有効活用

港湾の整備に伴って発生する良質な浚渫土砂は水質・底質の環境改善を図るための覆砂・干潟材料として有効活用されていますが、シルト・粘土系土砂は濁り等の問題から有効活用されていません。
このため、シルト・粘土系浚渫土砂を固化処理して覆砂・干潟造成材料として活用するため、固化材料の強度や環境への影響を調査し、浚渫土砂の安定化に向けた技術検討を実施しています。

【三河港での実験状況】 ■裏埋材やドレーン材への有効活用 浚渫土砂を改良し、裏埋材やドレーン材など港湾工事で使用する砂の代替材料として利活用するため、土質改良手法の検討を行います。

2.中川運河の環境再生に関する技術検討

中部地方整備局では閉鎖性水域である伊勢湾(三河湾を含む)の自然環境の保全と再生を図るため、伊勢湾再生推進会議を設立し、総合的な伊勢湾とその流域の環境改善について、今後十年間で取り組む目標などを盛り込んだ、「伊勢湾再生行動計画」を策定することとしています。
このため、名古屋港中川運河をモデルフィールドとして陸域と海域との連携も含めた水底質浄化技術について検討を行い、調査成果を行 動計画に反映させることとしています。

■覆砂・干潟材料への有効活用

港湾の整備に伴って発生する良質な浚渫土砂は水質・底質の環境改善を図るための覆砂・干潟材料として有効活用されていますが、シルト・粘土系土砂は濁り等の問題から有効活用されていません。
このため、シルト・粘土系浚渫土砂を固化処理して覆砂・干潟造成材料として活用するため、固化材料の強度や環境への影響を調査し、浚渫土砂の安定化に向けた技術検討を実施しています。

3.伊勢湾環境データベース

伊勢湾、三河湾、および駿河湾の良好な沿岸域の環境を保全し、再生・創造するためには、湾内の環境変化を把握したうえで様々な取り組みを検討し、実行していく必要があります。  このため、各機関が実施した湾内の環境に関するデータを「誰も」が「公平」かつ「容易」に利用できる情報基盤を提供することを目的として「伊勢湾環境データベース」を構築し、インターネット上で平成17年度より運用開始し、管理・運営を行っています。

http://www.isewan-db.go.jp/


実験

伊勢湾水理環境実験センターの概要

環境実験施設(伊勢湾環境水槽)

大きさ:縦50m×横36m
環境実験施設は、伊勢湾を平面で2000分の1、深さ方向159分の1の縮尺で縮尺で再現し、閉鎖性海域である伊勢湾・三河湾の潮流や汚濁拡散のメカニズムなどを調べる水槽です。

潮流実験

埋立や航路の整備等による地形の変化、潮汐現象によって湾内の流況がどのように変わり、海洋の環境にどのような変化を与えるかを実験しています。

拡散実験

河川流入地点や工場地帯等から蛍光塗料を流し、湾内の汚染物質の拡散状況を実際の湾内の潮汐現象を再現し実験しています。

波浪実験施設

波浪平面水槽

大きさ:縦30m×横19m×深さ1.2m
一方向から造波し、防波堤の安定性や越波量など防波堤の性能を調べる水路です。
実際の海で見られる不規則波(1波毎に波の大きさが異なる波)を作用させ、防波堤や消波ブロックの安定性の実験。

長水路水槽

大きさ:縦30m×横1m×深さ1.2m
防波堤による波の遮へい効果などを調べる水槽です。
防波堤による波の遮へい効果や、海上での複雑な波浪現象の考慮が必要な実験に利用します。
対象とする港湾周辺の地形や構造物の配置を考慮し、効果的な防波堤の配置を検証しています。また、防波堤先端部や、不連続な箇所の波浪現象を再現するために利用します。